代理店から、こう聞かれることがあります。「名刺とチラシに、御社のロゴを入れていいですか」。断る理由はないので、つい「いいですよ」と答えてしまいます。代理店にロゴを使わせる話は、口約束で始まりがちです。
じつは、ロゴが商標として登録されているなら、その使い方には法律のルールがあります。使わせる範囲を決めないまま許すと、あとで使い方を確かめる手がかりが残りません。
この記事では、商標法の条文と特許庁のページで確認できた範囲で、使用許諾で決める3点と、権利の期間を整理します。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
代理店にロゴを使わせるとき、使用許諾は要る?先に結論:登録済みなら、範囲を決めて書面にします
- 商標法第25条は、商標権者は、指定商品や指定役務について、登録商標を使う権利を専有すると定めています。
- また、他人に使わせるときは、商標権者が通常使用権を許諾します(第31条)。通常使用権者は、設定行為で定めた範囲内で、登録商標を使う権利を持ちます。
- さらに、使用許諾で決める点は、使う範囲、期間、やめるときの3点です。
つまり、代理店にロゴを使わせるなら、「どこに、いつまで、やめたらどうするか」を先に決めます。そして、その前の確認が、ロゴが登録してあるかどうかです。
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代理店にロゴを使わせる前に、ロゴは登録してある?
商標法は、文字、図形、記号、立体的形状、色彩、またはこれらの結合などを「標章」とし、業として商品を生産したり、役務を提供したりする者が、その商品や役務について使うものを「商標」としています(第2条)。つまり、文字だけのロゴも、図形のロゴも、商標の形になりえます。
そのうえで、商標権は設定の登録により発生する、と定めています(第18条)。つまり、登録していないロゴには、この条文でいう商標権が、まだありません。なお、登録していないロゴの扱いは、この記事では扱いません。迷うときは、弁理士に聞いてください。
登録してあれば、商標権者は、自己の商標権を侵害する者や、侵害するおそれがある者に対して、その侵害の停止や予防を請求できます(第36条)。だから、使わせる前の確認が大切です。
商標権は十年で終わり、更新の申請は6か月前から
商標権の存続期間は、設定の登録の日から十年で終了します(第19条)。ただし、更新の申請で更新できます。更新の申請は、満了前6か月から満了の日までの間にします(第20条)。
一方、更新の申請をしないと、商標権は存続期間の満了の時にさかのぼって消滅したものとみなされます(第20条)。そのため、代理店との許諾の期間は、商標権の期限と並べて見ます。
代理店に先に出願されたら、ロゴは登録できる?
第8条は、同一または類似の商品や役務について使う、同一または類似の商標について、異なった日に2以上の出願があったときは、最先の出願人のみが登録を受けられるとしています。ただし、先の出願人の承諾などの例外もあります。
つまり、代理店が先に同じロゴを出願すると、自社が登録を受けられなくなるおそれがあります。これも筆者の読みです。出願は、自社で先に済ませます。
一方、特許庁のページは、商標権の効力は日本全国に及ぶが、外国には及ばないと説明しています。そのため、海外の代理店にロゴを使わせるときは、その国での権利の取得が重要とされています。
使わせる範囲は?許諾書に書く3点
通常使用権者が使えるのは、設定行為で定めた範囲内です。つまり、範囲を書かなければ、どこまで許したのかが見えません。
また、商標法第2条は、商品や役務に関する広告、価格表、取引書類に標章を付して展示したり、頒布したりする行為を、商標の「使用」に含めています。さらに、電磁的方法で、そうした情報に標章を付して提供する行為も含みます。
そのため、代理店のチラシ、見積書、サイトにロゴを載せることは、「使用」の話になります。ここは筆者の読みです。
許諾書に書く3点は、次のとおりです。
- 1まず、使う範囲:チラシ、見積書、サイト、名刺など、使う場所を書く
- 2次に、期間:開始日、更新の条件、終了日を書く
- 3最後に、やめるとき:ロゴの削除と、印刷物の扱いを書く
別のサイトの代理店ってなんぼのもん?のコラム「代理店・フランチャイズ契約前の確認項目(手数料・期間・解約)」では、期間・更新・解約の確認項目として、「契約終了後、在庫、商標や屋号の使用、顧客情報、設備はどう扱われるか」が挙げられています。
出典:代理店ってなんぼのもん?「代理店・フランチャイズ契約前の確認項目(手数料・期間・解約)」
たとえば、従業員が数人の雑貨メーカー(仮の例です)が、代理店にロゴの使用を口頭で許したとします。契約が終わったあとも、代理店のサイトにロゴが残っていました。ところが、終了後の扱いを書いていないので、外してほしいと頼む根拠が、はっきりしません。
代理店の使い方が悪いと、商標登録が取り消される?
商標法第53条は、通常使用権者が、商品の品質や役務の質の誤認、または他人の業務に係る商品や役務との混同を生ずる使用をしたときは、何人も、商標登録の取消しの審判を請求できるとしています。
ただし、商標権者がその事実を知らなかった場合に、相当の注意をしていたときは、取り消されません。そのため、代理店の使い方を定期的に見ておくことが、備えになります。ここは筆者の読みです。
代理店のロゴの使用は、3年の不使用にも関わります
また、第50条は、継続して3年以上、日本国内で、商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれもが登録商標を使っていないときは、何人も取消しの審判を請求できるとしています。つまり、通常使用権者である代理店の使用も、条文では判断の対象に入ります。
ただし、許諾なしに使われているだけの場合の扱いは、条文からは読み取れません。ここは専門家に確認してください。
代理店にロゴを使わせる人から、よくある質問を3つ
まず、「登録していないロゴでも、許諾書は要る?」と聞かれます。答えは、条文では言い切れない、です。ただし、使う範囲と終わらせ方を書面に残すことは、登録の有無にかかわらず役立つと、筆者は考えます。
次に、「代理店の名刺にロゴを入れるのは、使用にあたる?」と聞かれます。答えは、条文だけでは分からない、です。そのため、使う範囲に「名刺」と書いておきます。
最後に、「許諾した代理店の使い方は、いつ見ればいい?」と聞かれます。答えは、決まった頻度は確認できなかった、です。筆者なら、契約を更新する前と、チラシやサイトを作り直す前に見ます。
代理店にロゴを使わせる、今日からできる最初の一歩
まず、自社のロゴの登録番号を調べてください。その後、登録があれば、代理店ごとに「使う範囲、期間、やめるとき」を1行ずつ書き出します。
代理店契約の型の選び方は、こちらの記事に書いています。
「代理店契約」のはずが、中身は「販売店」だった?契約の3つの型と、決めておくこと
また、代理店を持つ前に決めておく条件は、こちらです。
副業の営業マン300人を集めて、動いたのは10人。代理店を持つ前の3条件
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