年明けから、新しく代理店さんと組むことになりました。ひな形を探してきて、社名と手数料を書き込み、印刷して2部用意します。ここで手が止まります。「この契約書、印紙は貼るの?金額が書いていないけど」。
実は、代理店契約書は、金額が書いていなくても印紙が要ることがあります。印紙税の「第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)」に当たると、税額は1通につき4,000円です。しかも、決め手は題名ではなく中身です。「業務委託契約書」という題名でも、当たることがあります。
この記事では、代理店契約書が第7号文書に当たる条件と外れる条件、副業の個人と結ぶ場合、貼り忘れたときの過怠税を、仮の契約書3つで整理します。国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)と、印紙税法施行令にもとづく、2026年10月時点の一般的な話です。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論:「業務の範囲」か「払い方」が書いてあれば、第7号文書になりやすい
答えを先に並べます。
- 商品の販売に関する業務を、続けて代理店に任せる契約書で、任せる業務の範囲か、手数料の払い方が書いてあれば、第7号文書に当たります。
- 税額は1通につき4,000円です。契約書に金額が書いていなくても変わりません。
- 題名は関係ありません。「代理店契約書」「業務委託契約書」「パートナー契約書」など、名前を問わず中身で判断されます。
- 契約期間が3か月以内で、更新の定めもない契約書は、第7号文書から外れます。
- 貼り忘れると、本来の印紙税の3倍の過怠税がかかることがあります。
ひな形の代理店契約書は、たいてい「任せる業務」と「手数料の払い方」の両方が書いてあります。つまり、何も考えずに作ると、多くの場合は第7号文書になります。
第7号文書になる条件は、施行令26条に書いてあります
第7号文書の中身は、印紙税法施行令26条で決まっています。代理店に関係するのは、主に次の2つです。
- 126条1号:特約店契約書などで、営業者どうしが、売買や売買の委託などの取引を続けて行うための契約書のうち、目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法、再販売価格のどれかを定めるもの。
- 226条2号:代理店契約書、業務委託契約書など、名称を問わず、売買に関する業務を続けて委託するための契約書のうち、委託する業務の範囲か、対価の支払方法を定めるもの。
1号は、代理店が商品を仕入れて売る「販売店」型の契約に近い話です。2号は、代理店がメーカーの代わりに売る、または買い手を紹介する「代理店」型の契約に近い話です。どちらの型か迷う方は、契約の型の違いをこちらの記事にまとめています。
「代理店契約」のはずが、中身は「販売店」だった?契約の3つの型と、決めておくこと
意外なのは、2号の当事者には「営業者どうし」という条件がないことです。国税庁のタックスアンサー「No.7104 継続的取引の基本となる契約書」でも、代理店契約書などについては当事者が営業者に限らない、と整理されています。副業の会社員と結ぶ代理店契約書でも、条件を満たせば第7号文書に当たります。
仮の契約書3つで判定してみます
従業員4人の、業務用の清掃用品を売る会社(仮)が、年明けに3種類の契約書を作るとします。
- 11通目:副業の会社員と結ぶ「販売パートナー契約書」。紹介してもらう商品の範囲と、成約1件ごとの手数料を月末締め翌月末払いで払うことが書いてある。期間は1年で、自動更新つき。
判定:売買に関する業務を続けて委託し、業務の範囲と対価の支払方法を定めているので、第7号文書に当たる可能性が高いです。1通4,000円です。
- 12通目:地方の販売会社と結ぶ「特約店契約書」。卸値(単価)と、支払方法が書いてある。期間は2年。
判定:営業者どうしが続けて売買を行い、単価と支払方法を定めているので、26条1号の第7号文書に当たる可能性が高いです。
- 13通目:年末年始の2か月だけ、催事の販売を頼む「スポット契約書」。期間は12月1日から1月31日までで、更新の定めはない。
判定:契約期間が3か月以内で、更新の定めもないので、第7号文書からは外れます。
ただし、3通目でも「双方の申し出がなければ同じ条件で更新する」と一行入れると、外れる条件を満たさなくなります。短い契約にするつもりで自動更新の条項が残っていないか、ひな形を見直すと安心です。
ひとつ補足です。紹介だけを頼む契約も、売買に関する業務の委託として、2号に当たる可能性があります。名前ではなく中身で判断されるので、迷うときは税務署に契約書の案を見せて相談してください。
ただし、ここで間違えやすいです
- 印紙は1通ごとに必要です:契約書を2通作って双方が1通ずつ持つなら、2通それぞれが課税の対象になります。
- 誰が払うかは、法律では「作った人」です:印紙税法3条では、1つの課税文書を2人以上が共同で作った場合、連帯して納める義務があるとされています。どちらが負担するかは当事者で決めることですが、実務では、それぞれが自分の持つ1通に貼る形がよく見られます。
- 別の号に当たることもあります:国税庁の「No.7104」では、継続的取引の基本となる契約書に当たらなくても、内容によっては運送契約や請負契約の文書に当たる場合があると注意しています。請負の契約書は、書かれた金額で税額が変わります。
- 電気やガスの供給に関するものは、26条1号から除かれています。
貼り忘れたときの扱いも、国税庁の「No.7131 印紙税を納めなかったとき」に書いてあります。
- 印紙を貼らなかった場合:本来の印紙税の3倍の過怠税。
- 調査を受ける前に、自分から申し出た場合:1.1倍に軽減。
- 印紙に消印をしなかった場合:消印していない印紙の額面と同じ額の過怠税。
- 過怠税は、全額が法人税の損金にも、所得税の必要経費にもなりません。
4,000円の印紙を貼り忘れると、12,000円の過怠税になりうる計算です。しかも経費にできません。気づいた時点で、税務署に相談するのがいちばん傷が浅く済みます。
印紙のほかに、契約書の中身で何を確かめるかを並べた記事として、「代理店・フランチャイズ契約前の確認項目(手数料・期間・解約)」があります。手数料などの計算式、契約期間と更新、解約の予告や違約金を、契約前に書面で確かめる項目として整理しています。
出典:代理店ってなんぼのもん?「代理店・フランチャイズ契約前の確認項目(手数料・期間・解約)」
今日からできる最初の一歩:ひな形の「期間」と「払い方」の欄を見る
年明けに代理店契約を結ぶ予定があるなら、年内に、手元のひな形で次の3つを確認しておきます。
- 1任せる業務の範囲、または手数料の払い方が書いてあるか(書いてあれば、第7号文書になりやすい)。
- 2契約期間は3か月を超えるか。自動更新の条項はあるか。
- 3何通作るか。誰がどの1通に貼るか。
代理店契約書は、印紙のために作るものではありません。手数料の払い方や、任せる範囲をはっきり書くことは、代理店さんと長く組むための土台です。印紙代は、その土台を紙に残すための必要経費だと考えると、気持ちよく貼れます。
代理店コーナーの記事全体の地図は、こちらにあります。
「代理店コーナー」の歩き方。代理店ビジネスがいい商いである理由と、始める前に決めておくこと
個別の契約書が何号の文書に当たるかは、中身しだいで判断が分かれます。迷ったら、税務署の相談窓口か顧問税理士に、契約書の案を見せて確認してください。
運営元:コミッターズ
令和の総合商社では、有形無形問わずに大手商社が行わないマーケティングで貴社の販路を開拓します。本気で販路を拡大したい方には60分間無料で相談に乗らせていただきます。
参考(外部サイト):国税庁、国税庁(2)、e-Gov法令検索、e-Gov法令検索(2)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。