知り合いの社長が、お客様を1社紹介してくれました。無事に契約も決まりました。お礼に3万円を包んで渡し、経理に「紹介料で」と伝えます。すると顧問税理士から一言。「これ、交際費になるかもしれませんよ」。
実は、紹介のお礼は、払い方しだいで扱いが変わります。国税庁の通達には「情報提供料等と交際費等との区分」という項目があり、紹介を仕事にしていない人へのお礼でも、3つの条件を満たせば交際費に当たらない、と書かれています。逆に言うと、条件を満たさないお礼は、交際費として扱われる可能性があります。
この記事では、その3つの条件と、取引先の担当者個人にお礼を払うときの注意を、仮の3パターンで整理します。国税庁の租税特別措置法関係通達と、タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)にもとづく、2026年10月時点の一般的な話です。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論:「先に決めて、紙に書いて、相場で払う」
答えを先に並べます。
- 紹介を仕事にしていない人へのお礼でも、次の3つをすべて満たせば、交際費ではなく、正当な対価(支払手数料など)として扱われます。
- 1つ目は、あらかじめ結んだ契約にもとづいて払うこと。
- 2つ目は、頼む内容が契約で具体的に決まっていて、実際にその紹介を受けていること。
- 3つ目は、払う金額が、受けた紹介の内容から見て相当であること。
- ただし、取引先の従業員などの個人に払うお礼は、この扱いの対象から外れます。取引の謝礼として渡した金品は、原則として交際費になります。
ひとことで言えば、「決まってから後付けで包むお礼」は交際費に寄りやすく、「先に約束した手数料」は経費に寄りやすい、という話です。
通達に書いてある3つの条件を、かみくだくと
元になっているのは、国税庁の租税特別措置法関係通達「61の4(1)-8 情報提供料等と交際費等との区分」です。対象は、取引の情報提供や、取引の仲介(媒介・代理・あっせん)を仕事にしていない人です。そういう人に払う金品でも、正当な対価の支払と認められるなら交際費に当たらない、としています。
3つの条件を、社長の目線に置き換えると次のようになります。
- 1事前の約束:紹介が起きる前に、「紹介してくれたら、こういう条件で払います」と取り決めておく。口約束より、メールや覚書など、あとで見せられる形が安心です。
- 2中身の具体性:「お客様を紹介してもらう」だけでなく、どんな相手を、どこまで(名前を伝えるだけか、面談に同席するか)紹介するのかを決めておく。そして、実際にその紹介を受けている。
- 3金額の妥当さ:紹介の中身に比べて、高すぎない。1件の紹介で売上の半分を渡すような払い方は、説明が苦しくなります。
なお、代理店のように、紹介を仕事として請け負っている相手に、契約どおり払う手数料は、もともと取引の対価として考えるのが一般的です。この通達が効いてくるのは、知り合いの社長や、お客様ご本人など、紹介を本業にしていない人に払う場面です。
仮の3パターンで判定してみます
従業員5人の、事務所向けの観葉植物レンタルを手がける会社(仮)を例にします。数字はすべて仮です。
- 1パターン1:取引先の社長と、春にメールで「紹介で契約が決まったら、初年度のレンタル料の10%を紹介料として払います。紹介とは、先方の担当者を引き合わせる面談の設定までとします」と取り決めた。秋に紹介で1件決まり、その年のレンタル料30万円の10%、3万円を振り込んだ。
判定:事前の契約あり、中身も具体的で実際に面談が行われ、金額も取り決めどおりです。交際費に当たらない支払手数料として扱える可能性が高いです。
- 1パターン2:何の取り決めもないまま、知り合いの紹介で契約が決まった。うれしくなって、後日、現金3万円をのし袋に入れて渡した。
判定:あらかじめの契約がないので、1つ目の条件を満たしません。交際費として扱われる可能性が高いです。
- 1パターン3:お客様の会社の購買担当者が、自分の会社に発注を回してくれた。お礼に、担当者個人の口座に毎回1万円を振り込んでいる。
判定:取引先の従業員への取引の謝礼にあたり、原則として交際費です。通達の61の4(1)-15(9)にも、得意先や仕入先の従業員等に取引の謝礼として渡す金品は交際費等に含まれる、という例が並んでいます。
パターン3は、税金の話だけでは済みません。担当者が勤め先に黙って受け取っているなら、相手の会社との信頼関係が崩れるもとです。お礼をしたいなら、相手の会社あてに、会社どうしの契約として払うのが筋です。
紹介を頼むときの頼み方そのものは、こちらの記事にまとめています。
紹介営業の型。信用を借りる側が守る5つと、頼む前にそろえる3点セット【保存版】
紹介という形そのものを整理した記事として、「販売代理店・取次店・紹介・フランチャイズの違い」があります。紹介は契約の当事者にならずに引き合わせる形とされ、紹介料をいつ、何を基準に受け取るかは、成約の定義を含めて契約で決めておく項目として説明されています。
出典:代理店ってなんぼのもん?「販売代理店・取次店・紹介・フランチャイズの違い」
ただし、交際費になっても「全部アウト」ではありません
パターン2のように交際費になっても、慌てる必要はありません。国税庁のタックスアンサー「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」(5265番)によれば、期末の資本金が1億円以下などの中小法人は、交際費を年800万円まで損金に算入できる計算を選べます(もうひとつの計算方法は、接待飲食費の50%を損金に算入する方法です)。
つまり、小さな会社が年に数件、紹介のお礼を包む程度なら、交際費になっても税金の差はほとんど出ないことが多いです。それでも、次のような会社は、きちんと分けておく意味があります。
- 接待や贈答が多く、交際費の800万円の枠が気になる会社。
- 紹介の仕組みを、これから何十件も回していく予定の会社。
- 個人事業主として、事業に関係があるかどうかを説明する必要がある方。
もうひとつ、別の論点もあります。紹介料には消費税がかかる取引として扱われることが多く、インボイスの登録をしていない個人に払う場合は、払う側の消費税の計算に影響します。受け取った個人の側でも、所得として申告が要る場合があります。ここは税目ごとに話が分かれるので、顧問税理士に一度まとめて確認すると早いです。
今日からできる最初の一歩:紹介の取り決めを、メール1通にする
紹介をお願いしている相手がいるなら、次の5つを書いたメールを1通送っておきます。返信で「了解です」をもらえば、あらかじめの取り決めとして残ります。
- 1何をしてもらったら払うのか(引き合わせの面談の設定まで、など)。
- 2いつ払うのか(契約が決まった月の翌月末、など)。
- 3いくら払うのか(初年度の売上の何%か、1件いくらか)。
- 4払う相手(個人か、会社か。取引先の担当者個人には払わない)。
- 5取り決めの期間(いつまでの紹介が対象か)。
この5項目は、税金のためだけのものではありません。紹介する側にとっても「何をすればいいか」がはっきりするので、紹介が回りやすくなります。紹介を続けて頼む相手が増えてきたら、それはもう小さな代理店網です。契約の形の選び方は、こちらの記事で整理しています。
「代理店契約」のはずが、中身は「販売店」だった?契約の3つの型と、決めておくこと
個別の支払いが交際費に当たるかどうかは、契約の中身や金額で判断が分かれます。迷ったら、顧問税理士か税務署の相談窓口で、取り決めのメールを見せて確認してください。
運営元:コミッターズ
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※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。