「役員報酬を決めたら、社会保険料はいくらになるのか」。社長にとって、報酬の額と保険料は、セットで考える数字です。実は、社長の社会保険料は、報酬の額そのものではなく、「標準報酬月額」という等級で決まります。
つまり、役員報酬を少し動かしても、等級が変わらなければ、保険料は変わりません。一方で、等級をまたぐと、保険料は段になって動きます。
この記事では、社長の社会保険料の決まり方と、変わる時期、賞与の扱いを、日本年金機構と厚生労働省のページで整理します。なお、この記事は、日本年金機構のページ(2026年9月30日更新)で確認した内容です。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
社長の社会保険料、先に結論:決め手は役員報酬と標準報酬月額です
日本年金機構は、法人の事業所で、事業主のみの場合を含めて従業員を使用するなら、厚生年金保険と健康保険への加入が法律で義務づけられていると案内しています。さらに、厚生省の昭和24年7月28日の通知は、法人の代表者や業務執行者であっても、法人から、労務の対償として報酬を受けている者は、被保険者の資格を取得させるとしています。
つまり、報酬を受けている社長は、加入の対象です。そのうえで、保険料は、次の3つの順で決まります。
- 1役員報酬の月額を、等級に当てはめて、標準報酬月額にする
- 2標準報酬月額に、保険料率をかける
- 3会社と社長が、半分ずつ負担する
役員報酬を決める
標準報酬月額にする
保険料率をかける
半分ずつ負担する
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社長だけの会社でも社会保険に入るのか、という入口の話は、こちらの記事に書きました。この記事は、入ったあとの話です。
社長1人の会社でも、社会保険は入る?「法人」だと答えが決まっています
保険料は、会社と半分ずつ負担します
日本年金機構によると、厚生年金保険の保険料は、毎月の保険料額が「標準報酬月額×保険料率」です。そして、事業主と被保険者が半分ずつ負担します。
別のサイトの仲間づくり部(ニコニコデスク)のコラム「社会保険の適用拡大に備える手順|パートの加入条件」では、パートさんの加入を試算する手順の中で、「加入すると保険料は会社と本人で分け合います」と書かれています。
出典:仲間づくり部「社会保険の適用拡大に備える手順|パートの加入条件」
社長の場合も、この分け合い方は同じです。つまり、社長の報酬から引かれる分と同じ額を、会社も負担します。そのため、役員報酬を決めるときは、手取りだけでなく、会社が負担する保険料も合わせて見ておきます。
社長の社会保険料は、標準報酬月額の等級で決まります
標準報酬月額は、毎月の給与を一定の幅で区分して、当てはめた金額です。日本年金機構の説明では、基本給のほか、残業手当や通勤手当などを含めた、税引き前の給与が対象です。
社長の場合、役員報酬が、この給与にあたります。さらに、役付手当、住宅手当、通勤手当のように、事業所から現金または現物で支給されるものも、報酬に含まれます。そのため、役員報酬のほかに手当を出しているなら、その分も等級に影響します。
社長の社会保険料の上限は、32等級です
標準報酬月額は、1等級(8万8千円)から32等級(65万円)まで、32等級に分かれています。つまり、等級には最高があります。
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たとえば、標準報酬月額が最高の32等級なら、厚生年金保険料は、65万円に18.3%をかけた額です。その半分が、社長の負担分になります。
ただし、この記事の計算は、厚生年金保険料だけです。健康保険の保険料は、加入している健康保険の保険料額表で確認してください。
役員報酬を変えたら、いつ保険料が変わる?
標準報酬月額は、一度決まると、そのままではありません。決め直す場面が、いくつかあります。
まず、会社を作って社長が加入したときは、資格を取得したときの報酬をもとに、等級を決めます。取得月から、その年の8月まで使われます。ただし、6月1日から12月31日までに取得した場合は、翌年の8月までです。なお、被保険者資格取得届は、5日以内に日本年金機構へ出す決まりです。
次に、毎年の決め直しがあります。これを定時決定といいます。毎年7月1日現在で、その前の4月、5月、6月に受けた報酬をもとに、等級を決め直します。そして、9月から翌年8月までの各月に使います。
随時改定:2等級以上の開きがあるとき
さらに、途中で報酬が大きく変わったときの決め直しが、随時改定です。日本年金機構のページには、昇給や降給などで固定的賃金が変わり、継続した3か月の平均が従前から著しく高低を生じたとき、とあります。目安は、標準報酬月額で2等級以上の変動です。
たとえば、役員報酬の月額を、大きく引き上げたとします。その後の3か月の報酬が、前の等級から2等級以上動くなら、随時改定の対象になりえます。ただし、実際に改定するかどうかは、厚生労働大臣が必要と認めたときです。また、報酬を下げても、保険料がすぐ下がるとは限りません。決め直しは、継続した3か月の報酬をもとに行うからです。
なお、役員報酬の金額を途中で変えるときは、税の面にも別の決まりがあります。動かす前に、顧問税理士に確認してください。
役員賞与は、社会保険料の対象?
役員賞与も、対象です。日本年金機構のページは、標準賞与額の対象となる賞与の例に、「賞与(役員賞与を含む)」を挙げています。
ただし、対象になるのは、年3回以下の支給です。また、年4回以上支給される賞与は、賞与ではなく、標準報酬月額の対象となる報酬として扱われます。
さらに、標準賞与額は、税引き前の賞与の額から、1千円未満の端数を切り捨てた額です。そして、1度の支給につき、150万円が上限です。同じ月に2回以上支給したときは、合算して見ます。
保険料でつまずきやすい3つ
最後に、つまずきやすい点を3つ挙げます。
- 報酬がない役員の扱い
- 健康保険の保険料率
- 役員報酬を変えるときの税の決まり
1つ目は、報酬がない役員の扱いです。昭和24年の通知は、「報酬を受けている者」を被保険者とする書き方です。そのため、報酬を出さない場合の扱いは、通知だけでは分かりません。年金事務所に確認してください。
2つ目は、健康保険の保険料率です。この記事では、厚生年金保険の18.3%だけを扱いました。加入先ごとの料率は、保険料額表で確かめます。
3つ目は、役員報酬を変えるときの税の決まりです。社会保険料と税は、別のルールで動きます。個別の判断は、顧問税理士や社会保険労務士に相談してください。
社長の社会保険料、今日の最初の一歩
今日できる最初の一歩は、いまの標準報酬月額の等級を確かめることです。加入手続きの書類や、年金事務所への問い合わせで確かめます。
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そのうえで、役員報酬を見直す前に、次の順で進めます。
- 1いまの等級と、次の等級との境目を確かめる
- 2報酬を変える月を決める
- 3変えたあとの3か月の報酬と、会社の負担を並べて見る
なお、報酬を少し動かしても、等級が変わらなければ、保険料は同じです。
営業や経営の面でも、同じ見方が使えます。来期の売上の見込みと、役員報酬、会社が負担する保険料を、1つの表に並べます。そうすれば、無理のない役員報酬が見えてきます。
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参考(外部サイト):日本年金機構、日本年金機構(2)、日本年金機構(3)、厚生労働省
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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