年末が近づくと、外注先への支払いの段取りが気になってきます。うちの支払いは「検収が済んだら、月末締めで翌々月払い」。昔からそうしてきたし、個人のデザイナーさんにも、そう伝えてあります。
ところが、フリーランスに仕事を頼む場合、報酬の支払期日は、検収をするかどうかに関係なく、受け取った日から60日以内に定めなければなりません。しかも、「できる限り短い期間内」です。受け取った日を1日目と数えるので、2026年11月2日に受け取った分の60日目は12月31日です。月末締めの翌々月払いだと、払うのは翌年の1月31日になり、60日を過ぎてしまいます(フリーランス・事業者間取引適正化等法4条)。
この記事では、2026年の年末カレンダーで日付を数えて、月末締めの扱いと、銀行が休む年末年始の払い方を整理します。2026年10月時点の情報です。公正取引委員会は、10月8日から11月30日までを、フリーランス法の広報強化期間にしています。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論
- 報酬の支払期日は、給付を受け取った日から60日以内で、できる限り短い期間に定めます(フリーランス法4条1項)
- 受け取った日を入れて数えます。検収が済んだ日や、請求書が届いた日から数えることはできません
- 「月末締め翌月末払い」は、公正取引委員会の質問と答え(問48)で、問題にしないとされています。翌々月払いは、月のどこで受け取っても60日を超えます
- 60日は上限です。いま早く払っている相手の支払いを、60日後に遅らせることは問題になります(問49)
- 12月31日から1月3日は、銀行が休みです。期限がこの日付にあたる分は、12月30日までに払うのが安全です
公正取引委員会が2026年6月10日に公表した、令和7年度の運用状況があります。勧告や指導の対象になった違反行為を類型別に数えた延べ2,727件のうち、「期日における報酬の支払義務違反」が最も多く、1,135件(41.6%)でした。支払いの期日は、違反として最も多く挙げられている点です。
60日は受け取った日から数える。2026年の年末カレンダー
フリーランス法4条1項は、支払期日を「給付を受領した日から起算して60日の期間内」と定めています。公正取引委員会と厚生労働省の「考え方」は、受け取った日を算入するとしています。受け取った日は、仕事の種類で変わります。
- 物品:受け取って、自分の管理下に置いた日
- データなどの成果物:メールで受け取ったときは、自社のパソコンなどに記録された時点(質問と答え、問45)
- 作業や撮影などの役務:提供を受けた日。数日かかる役務は、一連の提供が終わった日
従業員3人の○○業の会社が、個人のデザイナーに、年末のチラシを頼んだとします(仮の例です)。受け取った日ごとの、60日目の日付は次のとおりです。
- 10月30日(金)に受け取った分:12月28日(月)
- 11月2日(月)に受け取った分:12月31日(木)
- 11月16日(月)に受け取った分:2027年1月14日(木)
- 11月30日(月)に受け取った分:2027年1月28日(木)
- 12月28日(月)に受け取った分:2027年2月25日(木)
これは、遅くてもこの日まで、という日付です。早く払ってはいけないという意味でも、60日目に払えばよいという意味でもありません。
デザインの修正を3回お願いして、最後に「OKです」と返したのが11月20日でも、完成品として受け取った日が起算日です。OKを出した日や、請求書が届いた日から数え始めることはできません。ただし、作成の途中で、確認のために一時的に受け取った分などは、別の扱いになることがあります。考え方に書かれているので、迷ったら確認します。
月末締めなら、翌月末払いまで。翌々月は超える
月末締めの会社は多いと思います。公正取引委員会の質問と答え(問48)に、この場合の扱いが載っています。
毎月末日に締めて、翌月末日に払う制度だと、前の月の締切日の翌日に受け取った分は、61日目か62日目の支払になることがあります。この場合も、60日以内の規定を「受け取った日から2か月以内」として運用するので、問題にしないとされています。
仮の日付で並べます。
- 11月1日(日)に受け取り、11月分として12月31日に払う:受け取った日を入れて61日目。2か月以内なので、問題にしない扱いです
- 11月2日(月)に受け取り、11月分として翌々月の1月31日に払う:91日目。60日も、2か月も、大きく超えます
「検収が済んだ日から30日以内」「請求書が届いた日の翌月末払い」と決めている場合は、受け取った日から数え直します。検収や請求書が遅れた月に、60日を超えることがあるからです。
役務(撮影や運営の代行など)を月単位で締めるときは、考え方に3つの条件が書かれています。
- 1月末までの役務の報酬を、その月単位で払うことを合意して、書面か電磁的方法で明示している
- 2報酬の額か、その計算方法を明示している(単価が事前に決まっている場合に限ります)
- 3同じ種類の役務が連続して提供される
この3つを満たすと、締切対象期間の末日を提供日とみなして、そこから60日(2か月)以内の支払が認められます。
年末にやりがちな3つ
- 1資金繰りが厳しいから、60日目まで待つ:納品後すぐに払っていた相手に、「60日以内ならいい」として、次から60日後にする方法です。質問と答え(問49)は、60日以内という規定だけを理由に、従来より遅い支払期日を新たに設定するのは「できる限り短い期間内」とはいえず、問題になるとしています。60日は上限で、標準ではありません
- 2振込手数料を引いて振り込む:1か月以上続く委託(契約が更新されて続く場合は、通算で数えます)では、正当な理由なく報酬を減らすことが禁止されています(5条1項2号)。考え方と質問と答え(問30)は、振込手数料を報酬から差し引くことを、あらかじめ合意があっても、減額にあたり問題になるとしています。手数料は自社で持つ前提で、金額を決めておきます
- 3銀行の休みを忘れる:銀行は、12月31日から1月3日まで休みです(銀行法施行令5条)。考え方は、支払日が金融機関の休業日にあたる場合、翌営業日に順延することを書面か電磁的方法で事前に合意していて、順延が2日以内なら、60日を超えても問題としない、としています
3つ目を、日付で確かめます。11月2日に受け取った分の期限は、12月31日(木)です。翌営業日は1月4日(月)なので、4日の順延になり、2日を超えます。11月3日に受け取った分も、期限は1月1日で、同じです。この分は、前の営業日の12月30日(水)までに払います。
11月4日と5日に受け取った分は、期限が1月2日と3日です。1月4日への順延は2日以内ですが、事前の合意が前提です。年末に合意の有無を探すより、12月30日にまとめて払うほうが、楽で安全です。
別のサイトの「外注の見積書の見かたと確認項目を質問と答えで整理」には、支払条件を発注前に決める話として、支払期日、手形払、振込手数料、発注後の減額を取り上げた項目があります。取適法とフリーランス法のそれぞれでの扱いにも触れています。
出典:おまかせ係長「外注の見積書の見かたと確認項目を質問と答えで整理」
当てはまるかの見分け方と、例外
- 自社が対象か:従業員を使っている会社(週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇う見込みの人がいる場合)、または法人で役員が2人以上の会社は、支払期日の規定の対象です。社長1人で従業員がいない会社は、この規定の対象外です。ただし、条件を書面かメールで明示する義務(3条)は、すべての発注側にあります。支払期日も、明示する項目に入っています
- 相手が対象か:従業員を使わない個人、または代表者のほかに役員がなく従業員もいない法人(一人会社)が対象です。相手が従業員を使っていたり、役員が2人いたりする会社なら、フリーランス法の対象ではありません。その場合も、取引の内容や会社の規模によって、中小受託取引適正化法の対象になることがあります。条件は、公正取引委員会のページで確認します
- 相手の事情で払えないとき:たとえば、相手が誤った口座番号を伝えていたときは、その事情がなくなった日から60日以内に払えばよいとされています(4条5項ただし書)
- 元請けから受けた仕事を、そのままフリーランスに回すとき:再委託である旨、元の依頼主の名前、元の支払期日などを明示していれば、元の支払期日から30日以内になります(4条3項)
条件の明示は、こちらの記事に、最初の一歩を書いています。
個人に仕事を頼むとき、「条件」をメールで書いていますか?フリーランス法の最初の一歩
違反があると、公正取引委員会は、報酬を支払うべきことなどを勧告できます(8条2項)。勧告に従わなければ命令が出て、命令に違反すると、50万円以下の罰金です(9条、24条)。令和7年度の勧告10件のうち、9件に、期日における報酬の支払義務違反が含まれていました。
今日からできる最初の一歩
外注先ごとに、一覧を作ります。列は5つです。
- 1外注先と、仕事の内容
- 2受け取った日
- 360日目(期限)
- 4支払予定日(期限より前の日にします)
- 5源泉徴収の有無
個人への支払いには、源泉徴収が必要な報酬もあります。デザイン料の例は、こちらの記事にあります。
デザイナーに5万円払うとき、源泉徴収は必要?「個人は必要、法人は不要」が基本です
会計ソフトや支払管理のサービスを使っているなら、支払期日が、請求書の日付や締め日から出る設定になっていないかを見ます。受け取った日から数える列がなければ、一覧のほうに足します。
11月2日から5日に受け取る分には、カレンダーに「12月30日までに払う」と入れておきます。年末の繁忙期に頼める外注先の数は、受けられる仕事の数でもあります。気持ちよく払って、条件を書いておく相手には、来年も声をかけやすくなります。
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):e-Gov法令検索、e-Gov法令検索(2)、公正取引委員会、公正取引委員会(2)、公正取引委員会(3)、公正取引委員会(4)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。