取引先に誘われて、土曜の朝にゴルフ場へ。帰りの会計で領収書を見ながら、ふと思います。「社長のゴルフ代は、会社の経費で落ちるのかな。それとも、ただの休日の趣味なのかな」。
意外なのは、ここからです。ゴルフ場のレストランで食べた昼食が、1人2,500円だったとします。1人1万円以下の飲食なら、あの便利な「1万円ルール」が使えそうに見えます。ところが、国税庁の考え方では、ゴルフと一体の食事は「飲食費」ではなく、ゴルフとまとめて交際費です。
この記事では、社長のゴルフ代を2026年10月時点のルールで整理します。まず接待と趣味の分かれ目を見て、次に入会金や年会費の扱い、残しておくメモを確認します。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
社長のゴルフ代、先に結論
- まず、取引先や見込み客との接待ゴルフで、仕事のために必要と認められるプレー代などは、交際費として処理します。
- 一方、取引先が1人もいない社長のゴルフは、会社の経費ではなく、社長への給与とされるおそれがあります。
- また、ゴルフ場の昼食や、ゴルフの流れで続く食事は、1人1万円以下でも「飲食費の1万円ルール」が使えません。国税庁の文書では、ゴルフごと交際費という整理です。
- さらに、資本金1億円以下の会社なら、交際費を年800万円まで経費にできる枠があります(定額控除限度額)。
以上は、国税庁の案内(令和8年4月1日現在の法令等)で確認しました。さらに、令和8年度の税制改正の大綱を見ても、この部分を変える項目は見当たりませんでした。
社長のゴルフ代を、仮の数字で分けてみる
社長と取引先の担当者2人の、3人でラウンドしたとします。数字は説明用の仮のものです。
- プレー代:1人16,000円 × 3人 = 48,000円
- ゴルフ場の昼食:1人2,500円 × 3人 = 7,500円
- 合計:55,500円
昼食だけを切り出せるのか
昼食は1人2,500円なので、1万円以下です。そのため、「飲食だけ切り出して、1万円ルールで交際費から外せないかな」と考えたくなります。
ただ、国税庁の文書には、こう書かれています。ゴルフ・観劇・旅行などの催事に際しての飲食は、その催事と不可分で一体のものと考えられる、という内容です。別に単独で行われた飲食と認められる場合を除き、飲食費には当たりません。催事の費用とまとめて交際費等になる、という整理です。
この考え方は、2014年の「接待飲食費に関するFAQ」にあります。また、2006年の飲食費に関する質疑応答にも、同じ考え方が書かれています。2006年のものは、基準額が今の1万円ではなく5,000円だった時代の文書です。それでも、どちらも今も国税庁のサイトで読めます。さらに通達にも、旅行や観劇などの行事に際しての飲食は、行事と一体として扱う、という注意書きがあります。
つまり、この日の55,500円は、まとめて交際費です。昼食だけ「飲食です」と言い張っても、国税庁の整理を言い換えると、「カレーもゴルフの一部」です。
交際費の枠との関係
飲食の1万円ルールそのものの中身は、こちらの記事にあります。
社長の焼肉は会議費?交際費?税務署が見ているのは「肉」ではなく「メモ」だった
1万円ルールが使えると、その飲食は交際費から外れます。一方、使えないと、その分は年800万円の枠を使うことになります。小さな会社には広い枠です。ただ、枠に収まるかどうかより大事なのは、「仕事のゴルフだった」と説明できるかどうかです。
社長のゴルフ代に趣味が混ざると、「役員給与」になる
ここからが、社長ならではの落とし穴です。
休日に家族や友人と回ったゴルフ代を、会社のカードで払ったとします。国税庁の案内では、プレーにかかる費用は、業務のために必要と認められるなら交際費です。それ以外なら、その役員や使用人への給与になります。
役員の個人的な費用を会社が負担すると、役員への「経済的な利益」になります。給与の一種、という扱いです。そして役員の給与は、毎月同じ額の「定期同額給与」などに当てはまらないと、会社の経費(損金)に入りません。
たとえば、友人と回った日のプレー代18,000円を会社のカードで払ったとします。すると、この18,000円は経費ではなく、社長への給与とされるおそれがあります。さらに、会社の経費にならないだけでなく、社長本人の側にも課税の問題が出る場合があります。
整理すると、こうです。
- 1業務のために必要なゴルフ:交際費
- 2それ以外のゴルフ:役員への給与(定期同額給与などに当てはまらなければ、会社の経費にならない)
- 3会社が立て替えて、社長があとで返す:返さずに放置すると、無利息の貸付けとして、別の経済的利益と見られることがある
「ラウンド中に仕事の話も少ししたから」と、あとから理由を足すのは苦しくなりがちです。誘った時点での目的が残っているほうが、説明しやすくなります。
社長のゴルフ代を守る、残しておくメモは1行
ゴルフには、メモの決まった書式はありません。ただ、飲食の1万円ルールで国税庁が求めている項目をまねて残しておくと、説明しやすくなります。その項目は、日付、相手の名前と関係、人数、金額、店の名前と所在地です。
- 日付
- ゴルフ場の名前と所在地
- 同伴者の会社名・氏名・関係
- 人数
- 費用の内訳(プレー代、昼食代など)
- 目的
書き方の例です(取引先の名前は仮のものです)。
2026年11月7日/○○カントリークラブ(千葉県)/○○商事 山田様(既存のお客様)、同社 鈴木様(新しい担当者)/計3名/プレー代48,000円、昼食7,500円/目的:来期の取引拡大の相談
会計の直後に、スマホのメモに1行入れておけば、10秒で終わります。また、領収書の撮影も一緒にしておくと、あとで探す手間がありません。記録のコツは、次の記事も参考になります。
会食と出張の領収書を、次の商談につなげる記録に変える保存版メモ術
注意したいのは、メモの中身です。同伴者をあとから足したり、人数を水増ししたりするのは、事実の隠ぺい・仮装にあたるおそれがあります。実際、国税庁の飲食費に関する質疑応答にも、注意が書かれています。書類について、相手方を偽ること、人数を水増しすることへの注意です。つまり、メモは、あったことをそのまま書くものです。
社長のゴルフ代の例外と別ルール
ゴルフの経費には、プレー代のほかに、入会金や年会費の話があります。ここは国税庁の案内に沿って整理します。
入会金と年会費の扱い
- 1法人会員として入会する場合:入会金は資産に計上します。減価償却はできません。ただし、記名式の法人会員で、名義人の役員などが専ら業務に関係なく使うと認められるときは、その役員などへの給与になります。
- 2個人会員として入会する場合:入会金は、会員である役員などへの給与になります。ただし、無記名式の法人会員制度がないために個人会員として入り、その入会が法人の業務に必要で、法人が負担すべきものと認められるときは、資産に計上する処理が認められます。
- 3年会費や年決めのロッカー料など:入会金を資産に計上しているなら交際費、入会金が給与なら会員への給与になります。
- 4退会しても返ってこない入会金:退会した事業年度の損金になります。
プレー代は、入会金をどう処理したかに関係なく、業務に必要なら交際費、そうでなければ給与です。特に入会金は金額が大きくなりやすいので、契約する前に、顧問税理士に処理を確認しておきましょう。
昼食の例外と社内の行事
もうひとつ、昼食の話にも例外があります。国税庁のFAQは、催事とは別に単独で行われた飲食と認められるときは、別に考える、としています。例として挙げているのは、旅行の行程がすべて終わって解散したあとの場面です。一部の取引先を誘って飲食した場合が、これに当たります。
ゴルフの流れのまま続く食事は、一体と見られやすくなります。一方、いったん解散してから別の店へ、というように切れているときは、別の飲食として判断する余地があります。ここはグレーな部分なので、迷ったら、メモを残したうえで税理士に聞くのが近道です。
また、社内の行事も、別の整理です。専ら従業員の慰安のために行う運動会や旅行などの費用は、交際費から除かれ、福利厚生費などとされます。社員みんなが参加できる行事なら、そちらで考える余地があります。ただし、役員だけのラウンドは別の話です。
年800万円の枠と資本金
資本金1億円以下の会社は、飲食費の50%を経費にする方法と、年800万円の枠を、事業年度ごとに選べます。ただ、ゴルフと一体の食事は、この飲食費にも当たりません。そのため、ゴルフの日は、年800万円の枠で考えることになります。
最後に、この記事は資本金1億円以下の会社を前提にしています。資本金が1億円を超える会社は、年800万円の枠が使えません。
社長のゴルフ代を守る、今日からの最初の一歩
次にゴルフに誘う予定が1つでもあれば、前日までに、メモの「目的」の欄を1行だけ先に書いておきましょう。誰に、何を伝えたいか。それが決まっていないゴルフは、経費の説明でも苦しくなります。
ゴルフでも、会う前に相手の記事や資料を読んでおくと役に立ちます。ラウンド中は、移動の合間に話す時間がたくさんあります。そこで、会社の最近のニュースを1本読んでから行くだけで、その一言が、次の商談の入り口になります。
18ホールを回るあいだに領収書の整理まで済ませたいところですが、現実は、スコアを数えるので精いっぱいです。だからこそ、メモは会計の直後に1行。これだけで、経費の説明も、営業の振り返りも、ずっと楽になります。
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運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):国税庁、国税庁(2)、国税庁(3)、国税庁(4)、国税庁(5)、国税庁(6)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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