新米の季節は、袋詰めの季節でもあります。精米機から出てきたお米を、5kgの袋に入れて、はかりに載せる。針が4.97kgを指したとき、「30gくらい、いいか」と口を閉じるか、もう一すくい足すか。直売所や自家精米の通販をしている農家さんなら、毎日のように迷う場面です。
じつは、この「30g」には法律の物差しがあります。計量法の「量目公差(りょうもくこうさ)」という決まりで、精米の5kg袋なら、足りなくてよいのは50gまでです。そして意外なことに、同じお米でも玄米は、この量目公差のルールの対象になっていません。
この記事では、2026年10月時点で、お米の袋の中身がどこまで足りなくてよいのか、玄米と精米で何が違うのか、袋詰めの朝に確認したい点を整理します。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論
- 精米は、計量法の「特定商品」です。グラムやキログラムで示して売るなら、量目公差を超えて不足しないように量る義務があります(計量法第12条)
- 精米の公差は、1kgを超え25kg以下なら表示量の1%です。5kg袋なら50g、10kg袋なら100gまでの不足が許される範囲です
- 精米を袋に入れて封をして売るなら、内容量と、表記した人の氏名・住所を書く義務もあります(同第13条)
- 玄米は、計量法の特定商品ではありません。ただし、食品表示基準で内容量の表示は必要です
- 量目不足が見つかると、勧告、公表、命令の順で措置が取られることがあります(同第15条)
「多めに入れておけば安心」は半分正解です。公差は不足だけを見る決まりなので、多い分は公差の問題になりません。ただし、計量法は正確に量ることも求めています。
量目公差とは:足りない側だけを見る物差し
量目公差は、表示した量と実際の中身の差について、不足してよい上限を決めたものです。福島県計量検定所の解説では、誤差は「表示量から真実の量を引いたもの」で計算し、表示量より少ない場合に適用されるとされています。
対象になるのは、政令で決められた特定商品です。青森県の解説では、29の商品が指定されていると紹介されています。食品では、精米・精麦、食肉、野菜、果物、魚介類などが入っています。
精米・精麦に使われるのは、福島県の一覧でいう「表(一)」です。
- 5g以上50g以下:4%
- 50gを超え100g以下:2g
- 100gを超え500g以下:2%
- 500gを超え1kg以下:10g
- 1kgを超え25kg以下:1%
これを、直売所に並べがちな袋で計算すると、次のようになります。仮に、ある農家さんが3種類の袋をつくる場合です。
- 2kg袋:2,000g×1%=20gまで不足可(1,980gなら範囲内、1,975gなら不足)
- 5kg袋:5,000g×1%=50gまで不足可(4,950gなら範囲内、4,940gなら不足)
- 10kg袋:10,000g×1%=100gまで不足可(9,900gなら範囲内、9,890gなら不足)
冒頭の4.97kgは、不足30gなので範囲内です。ただ、ぎりぎりを狙う理由はありません。お客さんの家のはかりで量られても困らない量を、入れておくほうが気が楽です。
なお、野菜や魚介類は「表(二)」で、500gの袋なら15gまでと、精米より少しゆるく決められています。同じ直売所でも、品目ごとに物差しが違います。
意外な線引き:玄米は特定商品ではない
ここが、検索してもなかなか出てこない話です。山梨県計量検定所の質問と回答では、玄米は計量法上は特定商品ではないと書かれています。精米してはじめて、量目公差の対象になるということです。
それなら玄米の袋は中身がいいかげんでもよいかというと、そうではありません。消費者庁が掲載している2026年10月時点の食品表示基準(別表第24の玄米及び精米の項)では、内容量をグラムまたはキログラムの単位で表示することになっています。玄米でも、袋に「5kg」と書けば、その数字に責任を持つことになります。また、計量法は、法定計量単位で取引するときに正確に量るよう努めることも求めています。
まとめて覚えるなら、次の2行です。
- 精米:量目公差あり。封をして売るなら内容量と表記者の表示も義務
- 玄米:量目公差の対象外。でも食品表示基準で内容量の表示は必要
もう1つ、袋の大きさにも線があります。福島県の一覧では、精米の量目公差が決められているのは25kgまでです。農家さんの間でおなじみの30kgの紙袋は、玄米で取引されることが多く、その場合は二重の意味で量目公差の表からは外れます。ただし、取引の相手が業務用の米屋さんや飲食店なら、相手は自分のはかりで受け入れの重さを確かめます。法律の表から外れていても、数字が合わなければ次の注文に響きます。
たとえば、こんなやりとりです。
「先月の30kg、うちで量ったら29.6kgだったんだけど」
「えっ、袋ごと30kgで量っていました」
紙袋の重さを引き忘れると、こういう会話になります。法律の話の前に、取引の信用の話です。
ただし:不足の原因は「袋の重さ」が多い
量目不足は、悪気がなくても起きます。青森県の解説では、主な原因として、風袋(ふうたい)の引き忘れ、青果類の水分の蒸発、はかりの点検や調整の不足、粗雑な計量、ラベルの貼り間違いが挙げられています。
お米で特に多そうなのが、風袋です。風袋とは、袋や容器そのものの重さのことです。たとえば、仮に袋が40gあるとします。袋ごと量って「5.00kg」を確認して封をすると、中身は4,960gです。公差の50gには収まっていますが、袋がもう少し重ければ、すぐに外れます。はかりの「風袋引き」の機能を使うか、空袋を載せてゼロに合わせてから量るのが基本です。
もう1つの落とし穴が、はかりそのものです。取引や証明に使うはかりは、検定証印などが付いたものを使い、2年に1度の定期検査を受けることになっています(計量法第19条)。埼玉県の解説では、受けないと罰則(50万円以下の罰金)の対象になるとされています。家で使っていた料理用のはかりを、そのまま直売用に回していないか、一度確認してください。
量目不足が見つかった場合は、計量法第15条にもとづき、勧告、公表、改善の命令という順で措置が取られることがあります(青森県の解説)。都道府県や特定市の担当者が、店舗に立入検査に来ることもあります。
今日からできる最初の一歩
袋詰めの朝に、次の4つを紙に書いて、はかりの横に貼っておくと安心です。
- 1はかりに検定証印などがあり、定期検査の期限が切れていないか
- 2空袋を載せてゼロに合わせたか(風袋引き)
- 35kg袋なら4,950g、10kg袋なら9,900gを下回っていないか
- 4精米の袋に、内容量と、表記した人の氏名・住所が入っているか
営業の目線でいえば、量目は信用そのものです。筆者は野村證券の新人時代、毎日書いた手紙の実物を朝いちばんに上司へ見せていました。訪問の件数は口で盛れても、手紙の枚数は机の上で数えられてしまいます。お米の袋も同じで、お客さんは家で一度量ったら、次も買うかどうかを決めてしまいます。数字どおりの袋を積み重ねることが、いちばん地味で、いちばん強い営業です。
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運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):自治体、自治体(2)、自治体(3)、自治体(4)、自治体(5)、消費者庁
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