採用面接で「退職金って、ありますか?」と聞かれて、固まりました。その夜、スマホで「中退共」と検索しました。小さな会社では、わりとよくある流れです。ところが調べると、中退共に入れない社長がいることが分かります。
検索で出てくるのは、国が作った中小企業退職金共済制度、通称「中退共」です。掛金の一部を国が助成してくれる、ありがたい仕組みです。ただし、従業員のための制度なので、代表取締役は対象外です。
この記事では、2026年10月時点の公式ページをもとに、中退共でできること、国の助成の数字、退職金が出るまでの月数、あとで困る落とし穴を整理します。社長自身の退職金をどう作るかは、道筋だけ最後に示します。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
中退共に入れない社長のために、先に結論
- 中退共は、従業員のための国の退職金制度です。中退共に入れない社長とは、代表取締役のことです。
- 掛金は全額、会社が負担します。従業員に出してもらうことはできません。
- 新しく加入すると、掛金月額の2分の1(従業員1人あたり月5,000円まで)を、加入後4か月目から1年間、国が助成します。
- 退職金は、会社ではなく従業員本人に直接支払われます。会社に戻ってくるお金ではありません。
- 中退共に入れない社長の退職金は、別の制度(小規模企業共済)で作ります。
ちなみに、毎年10月は、国が中退共の「加入促進強化月間」にしています。2026年は10月1日から31日までです(厚生労働省、2026年9月18日の案内)。ただし、この記事は制度の説明です。入るかどうかは、会社の資金繰りと従業員の顔ぶれを見て決めるものです。
中退共に入れない社長と、入れる人・入れない人
中退共に入れるのは、中小企業の事業主です。業種ごとに、従業員数か資本金のどちらかが基準以下なら対象になります。
- 一般業種(製造業、建設業など):常時雇用する従業員が300人以下、または資本金・出資金が3億円以下
- 卸売業:100人以下、または1億円以下
- サービス業:100人以下、または5,000万円以下
- 小売業:50人以下、または5,000万円以下
従業員が10人以下の会社なら、どの業種でも、この基準の中に収まります。個人事業主の場合は、従業員数のほうで見ます。
従業員は、原則として全員を加入させます。ただし、期間を定めて雇う人、試用期間中の人、短時間労働者などは、加入させなくてもよいことになっています。
中退共に入れない社長と、入れない役員
では、入れない人は誰でしょうか。
- 代表取締役(社長)
- 副社長、専務、常務など
- 合同会社などの業務執行社員
- 監査役など
- 個人事業主の本人(従業員ではないため)
役員で入れるのは、支店長、工場長、部長のように、従業員としての仕事が中心で、従業員として賃金も出ている「使用人兼務役員」だけです。取締役という肩書きがあっても、実態が従業員でなければ、対象外になります。
家族と同居の親族は入れるのか
家族はどうでしょうか。従業員としての実態があれば、家族でも入れます。ただし、事業主と生計を同じくする同居の親族は、労働条件通知書や賃金の支払いが分かる書類で、従業員であることを確認されます。さらに、同居の親族しか雇っていない事業主は、新規加入の助成の対象外です。家族だけで回している会社は、ここで引っかかります。
もうひとつ、小規模企業共済に加入している人は、中退共の対象になれません。副業で別の会社の従業員になる、といった場面で出てくるルールです。
では、中退共に入れない社長は、自分の備えをどうするのでしょうか。中退共の公式ページ自体が、会社の役員や個人事業主向けの退職金制度として、小規模企業共済(中小機構が運営)を案内しています。くわしくは、こちらの記事にあります。
社長の退職金は自分で作る。小規模企業共済は「全額所得控除」で、受け取るときも優遇される
掛金と国の助成を、仮の数字で見る
掛金のルールは、シンプルです。
- 掛金月額は、従業員ごとに16種類から選びます(5,000円から30,000円)
- パートタイマーなどの短時間労働者は、2,000円、3,000円、4,000円も選べます
- 掛金は口座振替で納めます
- 掛金は、法人なら損金、個人事業なら必要経費として、全額を経費にできます
国の新規加入助成は、加入後4か月目から1年間です。掛金月額の2分の1、ただし従業員1人あたり月5,000円が上限です。助成金が振り込まれる形ではなく、引き落とされる掛金から助成額が差し引かれる形になります。
たとえば、従業員3人の会社が、全員を掛金月額1万円で新規加入させたとします(仮の例です)。
- 1まず、加入1〜3か月目:3人で月3万円が引き落とされます。助成はまだありません。
- 2次に、4〜15か月目:国の助成は、1人5,000円×3人で月1万5,000円。引き落としは月1万5,000円になります。
- 3最後に、16か月目以降:助成が終わり、引き落としは月3万円に戻ります。
助成の合計は、1万5,000円×12か月で18万円です。
注意したいのは、掛金月額が1万円を超える人です。たとえば月2万円の人は、2分の1なら1万円ですが、上限があるので助成は5,000円までです。助成が終わる月に、引き落としがぐっと増えます。資金繰りの予定表に「加入から16か月目」と書き込んでおくと、あとで慌てません。
中退共の退職金が出る月数と、あとで困る落とし穴
中退共の退職金は、掛金月額と納付した月数で決まります。ここに、見落としやすい月数のルールがあります。
- 加入から11か月以下:退職金は出ません
- 12か月以上23か月以下:掛金の合計を下回る額
- 24か月以上42か月以下:掛金の合計と同じ額
- 43か月目から:運用による利息などが加わり、長く続けた人ほど有利
43か月目からの上乗せのうち、付加退職金は、運用の状況などで年ごとに決まります。約束された金額ではありません。具体的な金額は、中退共の公式サイトにある退職金試算で確認できます。
あとで困る4つの落とし穴
落とし穴は、次の4つです。
- 1まず、辞めても掛金は戻りません。11か月以下で辞めた従業員の掛金や、掛金の合計を下回る分の差額は、会社に返ってきません。
- 2次に、退職金は会社が受け取れません。受け取る権利は、従業員本人(または遺族)にあります。会社の退職金規程より中退共の額が大きくなっても、差額を会社が受け取ることはできないので、規程は中退共に合わせて作ります。
- 3さらに、資金繰りが苦しくても、止められません。経営不振や資金難は、掛金を納めない正当な理由になりません。掛金月額を下げるには、その従業員の同意などが必要です。
- 4最後に、従業員に掛金を出してもらえません。一部でも、従業員負担にはできません。
退職金制度を作ること自体は、法律で義務とは決められていません。ただし、退職金を払うと決めるなら、対象者、計算方法、支払時期を決めておきます。常時10人以上の会社には就業規則を作る義務があり、退職金を定めるなら、その内容も書きます(労働基準法第89条)。就業規則の基本は、こちらの記事にあります。
従業員9人の会社に就業規則は必要?「10人」の壁と、なくて困る3つの場面
中退共に入れない社長が、今日からできる最初の一歩
「社長の分」と「従業員の分」を、紙に分けて書くところから始めましょう。
- 1まず、従業員の分:人数と、1人あたり月いくらなら5年続けられるかを書き出す
- 2次に、従業員の分:中退共の公式サイトで、退職金試算を見る
- 3さらに、社長の分:小規模企業共済の掛金上限(月7万円)と、自分の月の余裕資金を並べる
- 4最後に、顧問税理士や社会保険労務士に、退職金規程と経理の処理を確認する
私は昔、副業の営業マンを約300人集めたことがあります。実際に動いたのは、約10人でした。人は、集めるより、続けてもらうほうがずっと難しいのです。退職金は、続けてもらうための道具のひとつにすぎません。営業の現場で人が定着する仕組みは、こちらの記事にあります。
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筆者の記事:川口忠大のnote
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導入先を比べる:系統用蓄電池メーカー比較|法人が製品・導入支援・保守を同じ条件で見る方法
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情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):中退共、中退共(2)、厚生労働省、中小機構、e-Gov法令検索、中退共(3)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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