年末は、忙しい週と静かな週の差が大きくなります。フレックスと変形労働の比べ方を知らないまま勤務表を組むと、忙しい日に人を厚くした分が、そのまま時間外の扱いになってしまいます。
ただし、二つの仕組みは似た顔をしています。どちらも期間でならす仕組みですが、毎日の時間を決める主体が違います。会社が勤務表を決めるのか、本人が始まりと終わりを決めるのかが分かれ目です。
この記事では、フレックスと変形労働の比べ方を、決める主体、期間の長さ、届出の順で整理します。建設の現場と事務所の両方を思い浮かべて書きます。この記事は、公開時点の法令にもとづいています。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
フレックスと変形労働、先に結論
まず、結論から言います。フレックスと変形労働の比べ方は、名前の響きでは決まりません。比べる順番は、時間を決める主体、ならす期間、届出の有無の順です。
また、優劣はありません。工程に合わせて会社が勤務表を特定する仕事は変形労働、本人が段取りを組める仕事はフレックス、というように、仕事の姿で合う形が変わります。
さらに、どちらの仕組みも土台は同じです。期間でならす仕組みは、土台の物差しを超える話ではありません。
別のサイトのおまかせ係長のコラム「建設会社の日報と勤怠を紙からオンライン化する手順」では、「法定労働時間は一日八時間、一週四十時間以内と定められています」と書かれています。
出典:おまかせ係長「建設会社の日報と勤怠を紙からオンライン化する手順」
なお、年末だけの応急処置には向かない点も共通しています。どちらの仕組みも、就業規則や労使協定の段取りを先に置く形です。
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フレックスと変形労働、二つの仕組み
まず、変形労働の姿を見ます。1か月単位の変形労働時間制は、1か月以内の一定期間を平均して、1週間当たりの労働時間が週40時間を超えない定めを置く仕組みです。根拠は労働基準法第32条の2です。
変形労働は会社が勤務表を特定します
まず、定めの置き方です。就業規則などで定めるか、過半数の代表などとの書面の協定で定めます。協定で定めた場合は、所轄の労働基準監督署長への届出が要ります。
また、特定された日や週に、1日8時間や週40時間を超えて働いても、所定労働時間として扱われます。ただし、変形の期間内の各日と各週の所定労働時間を、前に定めておく必要があります。
さらに、勤務表を当日に伸ばす運用とは相性が分かれます。特定していない日に長く働いた分は、この仕組みの外側の話になります。工程表と勤務表を並べて組む建設の現場では、この前に決める姿が合います。
フレックスは本人が時刻を決めます
次に、フレックスの姿を見ます。フレックスタイム制は、一定期間の総労働時間を定めておき、その範囲内で、本人が日々の始業と終業の時刻を決めて働く仕組みです。根拠は労働基準法第32条の3です。
また、段取りは二つ重なります。就業規則などで始業と終業を本人の決定に委ねる旨を定め、そのうえで労使協定で、対象になる人の範囲、清算期間、総労働時間、標準となる1日の労働時間などを定めます。
さらに、清算期間の上限は3か月です。清算期間が1か月を超える場合は、1か月ごとに区分した期間で週平均50時間を超えない置き方にし、労使協定に有効期間を定めて、所轄の労働基準監督署長に届け出ます。届出をしないと、30万円以下の罰金の対象になります。
なお、本人が時刻を決める仕組みでも、会社が労働時間を把握する役目は残ります。出入りを任せきりにする形ではありません。

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仕事の姿に合うフレックスと変形労働の選び方
まず、工程の見え方で分けます。引き渡しの日が決まっていて、出面をそろえる現場は、変形労働に寄せます。会社が勤務表を特定する姿と、現場の段取りが重なります。
次に、本人の段取りで回る仕事を見ます。見積りの作成や事務の処理のように、始まりと終わりを本人に委ねても仕事が回る部署は、フレックスに寄せます。
手順は、次のとおりです。
- 1まず、年末の忙しい週と静かな週を工程表に書き出します
- 2次に、出面をそろえる仕事と、本人に委ねられる仕事を分けます
- 3次に、分けた仕事ごとに、変形労働かフレックスかを当てます
- 4最後に、就業規則と労使協定の段取りを、始める前に確かめます
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たとえば、従業員が十人ほどの工務店を考えます。現場は変形労働で勤務表を特定し、事務所の見積り担当はフレックスで時刻を本人に委ねる、という分け方が成り立ちます。同じ会社の中でも、仕事の姿ごとに仕組みは分けられます。
なお、比べ方に迷う場面の多くは、忙しさの出方で決まります。忙しい日が前に読める仕事は変形労働、忙しさの中で本人が順番を組める仕事はフレックス、という置き方です。
特に、現場と事務所で同じ言葉を使い回す点には注意が要ります。変形労働の勤務表は会社が特定した紙であり、フレックスの出入りは本人が決めた時刻です。同じ「ならす」という言葉でも、決める主体が逆です。言葉をそろえないまま年末に入ると、勤務表の読み違いが起きます。
年末に決めるときの注意点
まず、変形労働は各日と各週の時間を前に定める点です。年末の工程が流動的な現場ほど、勤務表の特定が後ろにずれやすくなります。特定が間に合わない日は、仕組みの外側で扱う前提を先に置きます。
次に、フレックスは清算期間の置き方を見ます。清算期間が1か月を超える置き方では、1か月ごとの週平均50時間の物差しと、協定の届出が重なります。年末の忙しさだけを見て期間を長くすると、届出の段取りが後ろから付いてきます。
また、総労働時間の総枠も見ます。フレックスの総労働時間は、法定労働時間の総枠の範囲内で定める形です。清算期間全体で週平均40時間を超える置き方はできません。
さらに、時間外の扱いは別に残ります。どちらの仕組みでも、総枠を超えた分は時間外労働の話です。仕組みを入れたから残業の話が消える、という置き方にはなりません。
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実は、年末は制度の新設そのものが重荷になる場合もあります。規則と協定の段取りが年末の繁忙と重なる会社は、まず勤務表の組み方だけをこの比べ方で見直し、仕組みの導入は年明けの静かな時期に置く判断も成り立ちます。

フレックスと変形労働、今日からできる一歩
まず、年末の工程表と勤務表を並べて開きましょう。具体的には、忙しい週と静かな週の差が、どの仕事に出ているのかを書き出します。次に、その仕事が会社に決めてほしい時間なのか、本人が決められる時間なのかを見ます。
なお、個別の当てはめに迷うときは、管轄の労働基準監督署や顧問の専門家に確かめます。仕組みの名前ではなく、定め方と実態で扱いが変わるためです。
このように、比べ方は、勤務表を書き始める前にあります。決める主体がそろっている会社は、年末の工程の相談にも早く答えられます。
また、決めた分け方はメモに残しておきます。次の繁忙期も、同じ物差しで勤務表の段取りを始められます。
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