年末に向けて、申込を増やしたい。そこで思いつくのが「今月お申し込みの方全員に、豪華特典プレゼント」です。チラシの見出しを考えているうちに、特典はどんどん豪華になっていきます。気づけば、本体のサービスより特典のほうが目立っています。営業会議でよく見る光景です。
じつは、申込者全員に配る特典には、景品表示法で上限があります。「総付景品(そうづけけいひん)」と呼ばれるもので、上限は取引の価額の10分の2です。取引の価額が1,000円未満なら200円までです。そして、意外と知られていないのが、同じ「お得」でも、値引きやセット販売は景品の扱いにならない、という点です。
この記事では、個人のお客様向けのサービスを売っている小さな会社が、申込特典を考えるときの上限の計算と、景品にならない特典の線引きを、仮の3つの例で整理します。2026年10月時点で消費者庁が公表している告示と運用基準にもとづいています。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論
- くじや抽選ではなく、申込者全員や先着順で配る特典は「総付景品」です
- 上限は、取引の価額が1,000円以上なら、その10分の2です。1,000円未満なら200円です
- 景品の値段は、仕入れ値ではなく、もらう人が普通に買うときの値段(市価)で考えます
- 値引き、アフターサービス、本体に付いているのが当たり前のものは、景品類に当たりません
- 「セットで○円」と組み合わせて売っていることが明らかなものも、原則として景品ではありません。ただし「○○無料」「○○プレゼント」とうたうと、景品として扱われることがあります
- この上限は、一般消費者(個人のお客様)向けの決まりです
特典を豪華にしたいときほど、「プレゼント」より「値引き」や「セット」の形にできないかを先に考えるのが近道です。
総付景品の上限を、仮の3例で計算する
数字はすべて仮のものです。景品の上限は、景品の価額が「取引の価額の10分の2」以内かどうかで見ます。
- 1出張撮影サービス(1回30,000円)の申込者全員に、写真立て(市価3,000円)を贈る場合です。上限は30,000円の10分の2で6,000円なので、範囲内です
- 2出張の換気扇掃除(1回3,000円)の申込者全員に、洗剤セット(市価1,000円)を贈る場合です。上限は3,000円の10分の2で600円なので、超えてしまいます
- 3同じ換気扇掃除で、洗剤セットをやめて、料金を1,000円引きにする場合です。これは値引きなので、景品類に当たらず、総付景品の上限は関係ありません
2と3を並べると、お客様が受け取る「お得」の大きさは同じなのに、扱いがまったく違うことがわかります。
もう一つ、購入額に関係なく全員に配る特典の「取引の価額」は、原則として100円とされています。ただし、対象のサービスの通常の価格のうち、いちばん安いものが100円を超えるときは、その価格を取引の価額にできます。上の例のように、価格が1つだけのサービスなら、その価格で考えるとわかりやすいです。
同じ申込について、別々の企画で特典を重ねる場合は、合計した額で上限を見ます。「申込特典」と「年末感謝特典」を両方付けるなら、2つの合計が10分の2以内かを確認します。
景品にならない「お得」の線引き
消費者庁が公表している運用基準では、次のようなものは、原則として景品類に当たらないとされています。
- 値引き:「3回ご利用で次回1,000円引き」のような減額や、支払った代金の割戻し
- 同じサービスの追加:「5回ご利用で1回無料」のように、同じ対価で同じサービスを付け足すもの
- セット販売:「撮影とデータ納品と簡単な補正で○円」のように、組み合わせて売っていることが明らかなもの
- アフターサービス、本体に付いているのが当たり前のもの
ただし、例外があります。同じ「無料」でも、別のサービスを付けるのは同一の追加に当たりません。運用基準には「ハンバーガーを買ったらフライドポテト無料」は、実質的な同一商品の付加に当たらない、という例が載っています。撮影サービスで言えば「5回ご利用でアルバム無料」は、景品として上限の計算に入ると考えておくのが安全です。
また、セット販売のつもりでも、広告で「補正無料」「アルバムプレゼント」のようにうたうと、取引に附随する景品の提供に当たる、とされています。チラシの言葉選び一つで、扱いが変わるわけです。
値引きでも、現金を返す代わりに使い道を指定したり、抽選で値引きをしたりすると、値引きとは認められません。
ただし、上限が外れる特典もあります
総付景品に当たる場合でも、次のものには、10分の2の上限が適用されません(いずれも、正常な商慣習に照らして適当な範囲のものに限ります)。
- サービスを提供するのに必要な物品やサービス:運用基準の例では、重い家具の配送、講習の教材など
- 見本や宣伝用のもの:スポーツスクールの1日無料体験、社名入りのカレンダーやメモ帳など
- 自社のサービスで使える割引券
- 開店披露や創業記念の行事で配る物品
ノベルティを配るときの経費の扱いは、こちらの記事にまとめています。
ノベルティは経費?「広告宣伝費」と「交際費」の分かれ道は、配る相手です
もう一つ、営業に関係の深い点があります。お客様を紹介してくれた人へのお礼は、原則として「取引に附随」する提供に当たらず、景品類になりません。ただし、紹介者を自社のサービスの購入者に限る場合は別です。「ご契約者さまがご友人を紹介したら○○プレゼント」は、景品の上限の対象になり得ます。
なお、ここまでの上限は、一般消費者に対して景品類を提供するときの告示にもとづくものです。会社だけを相手にするサービスは、この告示の対象ではありません。とはいえ、相手の担当者への度を超えた贈り物は、相手の会社の規程や別の法律の問題になることがあるので、常識の範囲にとどめておきます。
今日からできる最初の一歩
今日やることは、いま出している特典を1つ選んで、次の順に確かめるだけです。
- 1その特典は、くじではなく、全員か先着順で配っているか
- 2値引き、同じサービスの追加、セット販売の形に言いかえられないか
- 3言いかえられないなら、特典の市価が、サービスの価格の10分の2以内か
- 4チラシやサイトの言葉が「無料」「プレゼント」になっていないか
特典は、豪華さより「誰に、何のために配るか」がはっきりしているほうが、営業の道具として使いやすくなります。上限を確認するついでに、その特典が本当に申し込みの決め手になっているかを、お客様の声と照らし合わせてみてください。
紹介をお願いする相手との約束ごとを文字にする方法は、こちらの記事にあります。
個人の営業パートナーに頼む前に。成果の定義を文字にする保存版チェック
特典の形が景品に当たるかどうかは、中身と見せ方で変わります。迷うときは、消費者庁や都道府県の景品表示法の相談窓口、弁護士に確認してください。
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):消費者庁、消費者庁(2)、消費者庁(3)、消費者庁(4)、消費者庁(5)、消費者庁(6)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。