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2026.10.22

食料システム法の「誠実に協議」とは?食材の値上げ相談に、2026年4月から新しい努力義務

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肥料も、段ボールも、燃料も上がりました。出荷先に「単価を相談したい」と言いたいのに、「じゃあ他に頼むよ」と返されそうで、言い出せません。逆の立場でも、悩みは同じです。仕入れ先から値上げの連絡が届いて、どう返事をすればよいのか迷います。食材を扱う小さな会社には、よくある場面です。

じつは、2026年4月から、食品の取引には国の法律による新しい努力義務があります。取引の相手から「費用が上がったので、条件を相談したい」と申し出られたら、誠実に協議に応じるよう努める、というものです。協議の申出を理由に、取引の量を減らしたり、取引をやめたりしないことも、国の判断基準に入っています。ただし、申出には理由を示す必要があります。値上げを受け入れる義務でもありません。

この記事では、2026年10月20日時点の食料システム法で、誰が対象か、申出の書き方、受ける側の対応、例外を整理します。

野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。

先に結論

取引の適正化は、農林水産省の資料では、「合理的な費用を考慮した価格形成」に向けた措置とされています。

申し出る側:理由つきの1枚で出す

たとえば、従業員4人の野菜農家さん(仮の例)が、取引先の青果卸に、単価の相談をしたいとします。法律が想定しているのは、持続的な供給に要する費用など、考慮を求める事由を示して申し出ることです(第36条)。農林水産省のガイドブックには、理由を示さず、希望の条件だけを一方的に出された場合は、誠実に協議しなくても努力義務違反にはならない、とあります。

つまり、「来月から単価を上げます」の一言だけでは、法律の後ろ盾を使いにくいのです。1枚に入れるものは、次の6つです。

  1. 1品目と、いまの単価・数量
  2. 2何が、どれだけ上がったか(資材、燃料、人件費、包装、運賃など)
  3. 3その根拠(伝票、公表されている統計、コスト指標など)
  4. 4希望する条件(価格だけでなく、数量、納品の日、納品の頻度も含みます)
  5. 5返事がほしい期限
  6. 6連絡先と、申出の日付

文面のイメージは、次のとおりです(仮の例です)。

「来月の出荷分から、○○の単価について、相談させてください。段ボールと運賃が上がり、1箱あたりの費用が、仮に30円増えています。伝票を添付します。納品の頻度や規格についても、ご希望を伺って、一緒に決められればと思います。11月20日までに、お返事をいただけますか。」

期限を書いておくと、相手も動きやすくなります。判断基準では、協議は「速やかに」始めることとされています。農林水産省のガイドブックには、期限が示されていない場合でも、1か月を過ぎて協議が始まらなければ、速やかな対応とは言いにくい、とあります。

申出は、書面でなくても構いません。ただ、言った言わないを避けるために、書面やメールで日付を残すことが有効とされています。

受ける側:判断基準の5つを知っておく

反対に、仕入れ先から値上げの相談が届いたときの話です。たとえば、従業員5人の漬物の加工会社さん(仮の例)が、農家さんから単価の相談を受けたとします。

国の判断基準(施行規則 第25条)は、受ける側に、次のことを求めています。

  1. 1協議を速やかに始めます。定期的な協議を頼まれたら、適切な頻度で応じます
  2. 2公表されている統計やコスト指標を使った説明は、合理的な根拠として尊重します
  3. 3価格などの条件を、一方的に決めません
  4. 4協議の申出を理由に、取引の数量を減らしたり、取引をやめたりしません
  5. 5受け入れられないときも、検討の結果と、その理由を説明します

このほか、持続的な供給に役立つ取組(商慣習の見直しなど)を提案されたときも、速やかに必要な検討と協力を行うことが求められています。

ここで大事なのは、5番です。協議のうえで値上げを断ること自体は、禁じられていません。求められているのは、検討の結果と理由を伝えることです。農林水産省のガイドブックには、努力義務違反になりうる行為の例が、いくつも載っています。

協議に応じるのは、手間のかかる話に聞こえるかもしれません。ただ、出す側から見れば、相談を受け止めてくれる買い手には、長く出荷したいと考えるのが自然です。不作の年や品薄の時期に、先に声をかけてもらえる関係づくりの手間と考えると、見え方が変わるかもしれません。

ただし、例外と注意

次の点は、勘違いしやすいところです。

コスト指標についても、書いておきます。米、野菜、豆腐、納豆、飲用牛乳(成分調整牛乳を除く)の5品目が、指標を作る対象として決まっています(施行規則 第26条)。国が認定した団体が、生産から販売までの費用を示す指標をつくり、協議で使えるようにします。ただし、国が認めた最低取引価格ではありません。農林水産省の資料には、取引価格が指標を下回っていても、直ちに措置の対象になるわけではない、とあります。品目ごとに、指標の作成が順に進んでいます。公表の状況は、農林水産省のページで確認してください。

独占禁止法の違反が疑われる場合は、公正取引委員会に通知される仕組みです。こちらは別の法律で、別の話です。

困ったときの窓口として、農林水産省のホームページには、努力義務に違反する事業者の情報を受け付ける窓口が、常時開かれています。相談先は、地方農政局にもあります。

今日からできる最初の一歩

営業の目線で見ると、値上げの相談は、お願いではなく、安定して届けるための相談です。法律も、「持続的な供給」を目的にしています。相談の1枚には、値上げの話だけでなく、相手の得になる話を1行足すと、通りやすくなります。たとえば、納品の頻度をそろえる、規格を絞る、まとめて出荷する、といった提案です。

最初の一歩は、売上のいちばん大きい品目を1つ選んで、費用を書き出すことです。資材、燃料、人件費、運賃を、月ごとの伝票で並べます。数字がそろえば、申出の1枚は、ほとんど書けたも同然です。

もう1つ、取引先が1社に偏っていないかも確認します。仕入れ先を2本持つ考え方は、こちらの記事にあります。

仕入れ先をもう1本持つ。飲食店と、選ばれる売り手の条件

営業の数字を見直す視点は、こちらの記事にまとめています。

10月に営業の数字を見直す5つの視点。後半戦の売上を作る保存版

運営元:コミッターズ

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参考(外部サイト):農林水産省、農林水産省(2)、農林水産省(3)、農林水産省(4)、e-Gov法令検索、e-Gov法令検索(2)

※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

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