年末のカニや新米を、自分のネットショップで売る社長がいるとします。商品ページのいちばん下に、小さな字で「生鮮品のため返品不可」。お客様から「思っていた大きさと違う。返品したい」と連絡が来たとき、「書いてあります」と言えるのでしょうか。
じつは、ネット通販には、国のルールで「商品を受け取ってから8日間は返品できる」という原則があります。「返品不可」と書けば、その特約が優先されます。ただし、書き方にも決まりがあります。ページの隅に小さく書いただけの例は、国のガイドラインで「認識しづらい表示のおそれ」とされています。さらにネットでは、注文ボタンの前の最終確認画面にも書く必要があります。
この記事では、2026年10月20日時点の特定商取引法(特商法)で、返品の書き方、最終確認画面の項目、年末の先払い予約で要る通知を整理します。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
先に結論
- 個人のお客様に売る通販には、受け取った日から数えて8日以内は、お客様の送料負担で返品できるという原則があります
- 広告に返品の特約(たとえば「返品不可」)を表示していれば、特約が優先されます
- ネット通販では、広告と、注文の最終確認画面の両方に、見やすく書きます
- 傷んで届いた、違う商品が届いたといった場合は、「返品不可」とは別の話です
- お店や会社が仕入れとして買う取引には、この通販のルールはかかりません
たとえば、12月22日に届けた商品なら、8日間は年末年始の休業と重なりやすくなります。休業中に返品の連絡が届く前提で、連絡先と対応の方針を決めておきましょう。
根拠は、特商法の第11条、第15条の3、施行規則の第24条と第44条、消費者庁の「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」です。個人の農家さんや漁師さんでも、商売として反復して売るなら、特商法の「販売業者」にあたります(消費者庁の特定商取引法ガイド)。
「返品不可」を有効にする書き方
法律は、返品に関する事項を「顧客にとって見やすい箇所において明瞭に判読できるように」表示することを求めています(施行規則第24条)。ガイドラインには、認識しやすい例と、そうでない例が載っています。
認識しやすいと考えられる例は、次のとおりです。
- 「返品不可」「到着後○日以内に限り返品可」「送料はお客様負担」といった、返品の可否と条件を、商品の価格の近くに、価格と同じ大きさで書く
- パソコンの標準設定で12ポイント以上の文字、色文字や太文字を使う
- 「返品について」などの見出しをつけて、ほかの項目に埋もれないようにする
- 「ご利用ガイド」にまとめるなら、各商品のページにも「返品不可」などの要点を書いて、詳細へのリンクをつける
認識しづらいおそれがある例は、次のとおりです。
- 返品について何も書いていない
- ページの隅や、極めて小さな文字で書いている
- 何十条もある購入規約の中に、ほかの項目と区別せずに入れている
- 長い画面をスクロールしないとたどり着けない場所にある
「飲食料品等、価値が極めて低下するものは返品不可」とだけ書く方法も、対象の商品の範囲が不明確な例として挙げられています。「生鮮食品と加工食品は返品不可」のように、どの商品が対象なのかが分かる書き方にしましょう。
たとえば、こんな書き方です(仮の文面です。方針は自社に合わせてください)。
- 返品について:生鮮品のため、お客様のご都合による返品はお受けできません
- 商品に傷みや誤りがあった場合:到着後○日以内にご連絡ください。交換または返金します。送料は当店が負担します
2行目を別に書いているのは、次の「例外」で説明する理由があります。
広告に書く基本の項目
通販の広告には、返品のほかにも、書く項目が決まっています(特商法第11条、消費者庁の特定商取引法ガイド)。主なものは次のとおりです。
- 販売価格と送料(送料が別なら両方)
- 代金の支払時期と方法
- 商品の引渡時期
- 返品に関する事項
- 事業者の名称(氏名)、住所、電話番号。法人がネットで広告するなら、代表者か責任者の氏名も
- 価格と送料のほかに、お客様が負担する金銭があれば、その内容と額
- 販売数量の制限など、特別な販売条件があれば、その内容
全部を商品ページに書くのが大変なら、「請求があれば書面を遅滞なく提供します」と表示して、一部を省く方法もあります。ただし、返品に関する事項は省略できません。ネットショップでは、「特定商取引法に基づく表示」のページにまとめることがよくありますが、返品は、そのページだけでなく、商品の近くにも書きましょう。
買う側の目線で年末ギフトの産直食材を選ぶ6つの手順を並べた記事として、「2026年の年末ギフトに産直食材を選ぶ手順」があります。最後の手順で注文ページの価格、送料、引渡時期、返品、事業者情報の読み方を扱い、インターネット通販では最終確認画面にも返品の特約を明記する必要があると説明しています。
出典:もぐもぐ産地ラボ「2026年の年末ギフトに産直食材を選ぶ手順」
最終確認画面と、年末の先払い予約で要る3つ
年末は、10月から予約を受けて、代金を先にいただき、12月に発送する商売が増えます。確認することは3つです。
- 1最終確認画面に、返品特約を書く。あわせて、分量、販売価格と送料、代金の支払時期と方法、商品の引渡時期、申込みの期間の定めがあればその内容も表示します(特商法第12条の6)。注文ボタンを、申込みになると分かりにくくする表示も禁止されています
- 2お届けの時期を、期間か期限で書く(施行規則第24条)。「12月20日から24日にお届け」のように書きます。「できるだけ早く」だけでは足りません。送料を表示するときは、金額で書きます
- 3先払いの予約には、承諾の通知を出す(特商法第13条)。代金を受け取ったあと、すぐに商品を送らないなら、遅滞なく、書面で通知します。お客様の承諾があれば、電子メールなどでも構いません
3番目の通知に書くことは、次のとおりです(消費者庁の特定商取引法ガイド)。
- 申込みを承諾するかどうか
- 事業者の名称、住所、電話番号
- 受け取った金額と、受け取った年月日
- 申込みを受けた商品と数量
- 承諾するなら、商品の引渡時期(期間か期限で)
「すぐに送る」の目安は、取引の実態からみて1週間程度とされています。たとえば、10月25日に注文と入金があって、お届けが12月下旬なら、通知が必要です。たとえば、注文の翌日に発送する商品なら、この通知は要りません。
例外と注意:傷んで届いたとき、お店向けの販売、盛った写真
まず、傷んで届いた場合です。「返品不可」は、注文どおりの商品が届いたときの取り決めです。傷み、違う商品、数の不足などは、別の話になります。ガイドラインは、返品特約と、品質が契約の内容に合わない場合の責任の特約は、区別して書く必要があるとしています。区別できない書き方だと、返品特約は注文どおりの商品が届いたときだけを定めたものと解され、傷みなどの責任は民法や商法の一般原則によるとされています。先ほどの文面で2行に分けたのは、このためです。
次に、お店向けの販売です。特商法の通販のルールは、営業のために、または営業として買う人との契約には適用されません(第26条)。飲食店や小売店に売る場合は、返品や欠品の条件を、見積書や取引条件の紙で決めておく世界です。仕入れ先を選ばれる側の条件は、こちらの記事にあります。
最後に、写真です。著しく事実と違う表示や、実際のものより著しく優良だと思わせる表示は、禁止されています(第12条)。商品ページの写真は、出荷する商品に近いものにしておくと安心です。
今日からできる最初の一歩
自分の商品ページを、スマホで開いてみます。返品についての表示が、3秒で見つかるかどうかを、家族や従業員にも確かめてもらいます。見つからなければ、「返品について」の見出しを作って、価格の近くに移します。
もう1つは、先払いの予約を受ける前に、承諾の通知メールの文面を1通つくっておくことです。お客様との約束を文字にしておくことは、リピートの連絡にも役立ちます。
このフロア全体の案内は、こちらにまとめています。
「B1F 農産・水産フロア」の歩き方。産地を見て選ぶ売り場と、食まわりのお金のルール
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):e-Gov法令検索、e-Gov法令検索(2)、消費者庁、消費者庁(2)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。