入社して10日の新人さん。あいさつの声は小さく、電話が鳴っても取らず、先輩は目をそらしています。「試用期間なんだから、合わなければ明日で終わりにしていいはず」。社長の頭に、そんな考えが浮かぶ夜があります。試用期間中の解雇は、本当に自由なのでしょうか。
試用期間中の解雇の話になると、よく出てくる数字が「14日」です。ところが、14日で要らなくなるのは、解雇の「予告」と「予告手当」だけです。つまり、「解雇には理由が要る」というルールは、試用期間でも、1日目から消えません。
この記事では、2026年10月時点のルールで、試用期間中の解雇の考え方を整理します。仮の日付で見る流れ、解雇の前に確認する6つのこと、試用期間でも変わらない社会保険・最低賃金・有給までを書きました。
野村證券のリテール営業で全国約7,000名中1位を4度。いまは代理店開拓で中小企業の販路をつくる会社「コミッターズ」を経営しています。川口です。
試用期間中の解雇、先に結論:14日で消えるのは「予告」だけです
まず、試用期間の解雇は、次の3つに分けて考えると整理できます。
- 入社から14日以内:解雇の30日前の予告も、予告手当も要りません
- 14日を超えたあと:原則として30日以上前に予告するか、平均賃金の30日分以上の予告手当を払います
- 日数に関係なく:解雇には「客観的に合理的な理由」が必要で、社会通念上相当と言えなければ無効になります
なお、上の2つは労働基準法(第20条、第21条)の「手続き」の話です。一方、いちばん下は労働契約法(第16条)の「理由」の話です。つまり、手続きが免除されても、理由の話は残ります。
そもそも、試用期間とは、本採用するかどうかを見極めるための期間です。ただ、その期間中も、労働契約はすでに成立していると考えられています。厚生労働省が公表している資料は、試用期間中は「解約権を留保した労働契約」が成立していると説明しています。通常の解雇より広い範囲で解雇が認められるものの、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と言えることが必要です。
試用期間中の解雇を仮の日付で見る:入社日から何が変わるか
たとえば、従業員4人の会社が、営業の新人さんを2026年11月2日に採用したとします。試用期間は3か月で、2027年2月1日までです。なお、すべて仮の例です。
- 11月10日(入社から1週間ほど):「雰囲気が合わない」と感じた。つまり、予告も予告手当も要らない時期です。ただ、「合わない」だけでは、理由として足りないことがあります
- 12月1日(入社から約1か月):解雇を決めた。14日を超えているので、解雇日を30日以上先にするか、足りない日数ぶんの予告手当を払います
- 1月15日(入社から2か月半):目標に届かないので、本採用を見送りたい。また、これも解雇にあたり、予告と理由の両方が問われます
- 2月1日(試用期間の満了日):満了の日に本採用を見送る場合も、理由が問われます。そのため、満了日の直前に慌てるより、1月のうちに動き始めるほうが安全です
なお、14日の前後で迷う場面は、日数の数え方で結論が変わることがあります。特に、ぎりぎりの日付のときは、労働基準監督署か社会保険労務士に確認しましょう。
試用期間中の解雇の前に確認する6つのこと
たとえば、厚生労働省が公表している、試用期間中の解雇をめぐるあっせん事例があります。まず、会社は、ミスやクレームが多く、注意しても改善がないとして解雇しました。一方、本人は、理由の説明が足りず、理由を書いた証明書ももらえていないと訴えました。話し合いの結果、会社が「解雇手続上の一部不備と指導不足」を認め、新しい雇用契約を結び直す形で解決しています。
同じ事例に出てくる考え方は、次のとおりです。採用のときには知ることができなかった事実が試用期間中に分かり、引き続き雇用しておくのが適当でないと判断することに、客観的な合理性があるかどうかが見られます。そのうえで、この考え方を踏まえて、解雇の前に確認したいことを順番に並べます。
- 1理由を一文で書く。面接や書類では分からなかった事実か
- 2指導した日付と内容が、記録に残っているか
- 3改善のための期間と目標を、本人に伝えたか
- 4本人の言い分を聞いたか
- 5解雇日までの日数(14日以内か、超えているか)と、予告または予告手当は足りているか
- 6本人から請求があったとき、解雇の理由を書いた証明書をすぐ出せるか
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ちなみに、6つ目は、労働基準法第22条にあります。さらに、解雇を予告された日から退職の日までの間でも、本人は理由の証明書を請求できます。そして、会社は、遅れずに交付しなければなりません。
実は、営業の新人さんは、「売上が出ない」が理由になりがちです。ただ、入社2か月の売上は、本人の力だけでなく、商品や紹介できるお客様の数にも左右されます。売上だけを理由にすると、説明が難しくなりやすいところです。
試用期間でも変わらない3つ
試用期間は「お試し」ですが、お試しにならない決まりがあります。
- 社会保険:日本年金機構は「試用期間中でも報酬が支払われる場合は、使用関係が認められる」と案内しています。加入の条件を満たす人は、試用期間が明けるまで待たず、事実発生から5日以内に資格取得届を出します
- 最低賃金:試用期間中も、最低賃金は適用されます。下回る額にできるのは、都道府県労働局長の許可を受けたときだけです。許可の目安は、減額率の上限が20%、期間は最長6か月とされています。許可なしに時給を下げることはできません
- 有給休暇:付与の条件にある「6か月」は、雇い入れた日から数えます。試用期間が明けた日から数え直すものではありません
勤続年数の考え方も同じです。厚生労働省のモデル就業規則は、試用期間を勤続年数に通算する書き方になっています。有給の日数の決まりは、こちらの記事にまとめています。
社員が1人でも、有給5日は「会社の義務」。取らせないと罰則の対象になる地味に怖い話
例外と注意:書いていないルールは、会社を守ってくれません
試用期間について、法律が決めていないことは意外と多いです。
試用期間を設けるかどうか、何か月にするかは、労働基準法では決まっていません。ただ、厚生労働省のモデル就業規則は、労働者の立場を不安定にするので、あまりに長い期間は好ましくないとしています。
従業員が10人未満で、就業規則がない会社は、特に注意が必要です。試用期間の長さ、その間の労働条件、解雇の事由を、雇用契約書か労働条件通知書に書いておきます。口頭で「3か月は様子見ね」と伝えただけだと、あとで「そんな話は聞いていない」となりやすいからです。就業規則を作る義務が出る「10人」の線引きは、こちらにあります。
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従業員9人の会社に就業規則は必要?「10人」の壁と、なくて困る3つの場面
試用期間を延ばしたいと考えたときは、就業規則や契約書に、その定めがあるかを先に確認します。定めがなければ、本人に話す前に、社会保険労務士に相談しておくと安心です。
初めて人を雇う前の確認事項は、こちらにまとめています。
初めての採用の前に整える3つ。就業規則・社会保険・有給をまとめて確認する完全ガイド
最初の一歩:新人の3か月を、1枚の紙にします
試用期間のトラブルの多くは、「何を期待していたか」が言葉になっていないところから始まります。営業の新人さんを迎えるなら、最初の1週間で、3か月の見取り図を1枚の紙にします。
- 11か月目:商品の説明を、自分の言葉でできるようになる
- 22か月目:先輩の同行から、単独での訪問や架電へ進む
- 33か月目:週ごとの行動量(訪問や架電の件数)の目安を、本人と決めて振り返る
売上は、結果です。先に見るのは、決めた行動をやれたかどうかです。月に1回、10分の面談をして、日付と一言をメモに残します。この紙とメモが、新人さんを育てる道具になります。そして、本採用を見送る場面が来たときには、会社が何を伝え、どう支えたかを示す記録にもなります。
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お金の学び(ウハウハ高等学校):ウハウハ高等学校の新着コラム
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筆者の記事:川口忠大のnote
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導入先を比べる:系統用蓄電池メーカー比較|法人が製品・導入支援・保守を同じ条件で見る方法
お金の面を読む:系統用蓄電池の充電コストを読む|調達契約と託送料金
情報サイトのトップ:ENERGY BANK(系統用蓄電池の情報サイト)
運営元:コミッターズ
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参考(外部サイト):厚生労働省、厚生労働省(2)、厚生労働省(3)、東京労働局、日本年金機構、日本年金機構(2)
※一般的な解説です。個別のケースは顧問税理士・社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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